運動と肩関節負荷

髪を洗う、食べる、飲む、投げる時に肩にはどのくらいの負荷がかかっていますか?

肩関節は、下肢に比べると大きな負荷は生じないように思いますが、日常生活で手を使う動作はたくさんあります

日常生活やスポーツ動作で肩関節にはどのくらいの負荷がかかるのかということを、複数の文献からまとめていきます

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目次

この記事のまとめ

  • 複数の報告から運動時に肩関節に生じる負荷についてまとめました

運動時に生じる肩関節の負荷

文献情報

Klemt C, Prinold JA, Morgans S, et al:Analysis of shoulder compressive and shear forces during functional activities of daily life.Clin Biomech (Bristol). 2018 May:54:34-41.

文献概要

右利きの健常者25名を対象に26種類のADL動作について計測された動作データおよび外力を利用した上肢筋骨格モデルから肩甲上腕関節に生じる負荷を定量化した

感想にマイル

日常生活で使う26種の運動時の肩関節の負荷を計測したという面白い文献です

椅子から立ち上がる際に「よっこらっしょ」と手で支える動作が肩関節としては最も大きい負荷を必要とするようです

確かにこの運動が唯一の荷重運動とも捉えられ、荷重を伴うと負荷は一気に上がるということが分かります

自重の運動よりも物を持つ動作でより負荷が高く、

身体に近い動作よりも、身体から遠い動作の方が負荷が高いということを客観的に示してくれています

この文献では各運動での剪断力に関しても記載があります

ご興味のある方はぜひご一読ください

人工骨頭置換術後の肩関節に生じる負荷

文献情報

Westerhoff P, Graichen F, Bender A, et al:In vivo measurement of shoulder joint loads during activities of daily living. J Biomech.2009 Aug 25;42(12):1840-9.

文献概要

62-80歳の変形生肩関節症で骨頭弛緩術を行った4例を対象に、8つの動作を実施

その際の関節内で生じる力をインプラントを利用して計測した

感想にマイル

非効き手の症例は、モーメントが高い傾向があり筋の協調性も関連があるかもしれないと述べられていましたが、

利き手と非利き手では、同じ重量で同じ動作をしてもモーメントの数値が違うという知見は面白かったです

肩の巧緻性がADL動作時の肩関節への負荷を変えるということは頭に入れておきたいですね

この文献で示されている客観的なデータは、

人工骨頭置換術後や腱板損傷後の患者など肩が上手に使えていない方に対しての日常生活動作指導のヒントになるのではないでしょうか

動作の説明は論文内で記載されているので、興味がある方はご一読ください

投球時に生じる肩関節の負荷

文献情報

鈴木智, 小川靖之, 菅谷啓之: 成人野球選手の機能変化.臨スポーツ医3:254-259, 2025

文献概要

プロ野球選手の肘OAの変化過程を12年に渡り経過を追った報告で、

OA変化が競技動作に適応し投球パフォーマンスが向上したという、非常に興味深い内容でした

この項の導入部分で、肩関節の投球時の負荷が述べられています

MERの後0.139秒のリリースポイントで肩関節には950Nの牽引力が加わり、その後のfollow throughでは500N以上の牽引力が加わり…

文献情報

Post EG, Laudner KG, McLoda TA, et al:Correlation of Shoulder and Elbow Kinetics With Ball Velocity in Collegiate Baseball Pitchers. J Athl Train. 2015 Jun;50(6):629-33.

文献概要

無症候性の全米大学体育協会(NCAA)ディビジョンI 野球投手67名を対象

(年齢 19.5 ± 1.2 歳、身長 186.2 ± 5.7 cm、体重 86.7 ± 7.0 kg;右投げ48名、左投げ19名)

各参加者の解剖学的ランドマーク上に26個の反射マーカーを設置し、8台の同期された高速度デジタルカメラを用いて、投球側上肢の肩および肘の三次元分析を行った

ボール速度はレーダーガンを用いて測定した

結果は、ボール速度 37.3 ± 1.6 m/s、肘外反トルク 5.7% ± 1.3%、肩牽引力 110.0% ± 16.0%(体重)、ならびに肩外旋トルク 5.2% ± 1.0%だった

感想にマイル

図:Rose MB, Noonan T : Glenohumeral internal rotation deficit in throwing athletes: current perspectives.Open Access J Sports Med. 2018 Mar 19:9:69-78. fig.1を引用

Post EG先生の研究では、肩の牽引力が記載されており、110%の力が方に生じていることが分かりました

投球時の負荷は体重の1.1倍と考えると、そんなに大きくない…?とも感じますが、

椅子からの立ち上がり補助とは異なり、関節負荷の方向が関節を向いていない状態で

(=軸圧がかかることで肩甲上腕関節の求心性が高まる方向ではない)

不安定な肩関節に体重の1.1倍の牽引ストレスが生じているということはかなり大きい負荷だと思われます

腱板機能、肩関節、肩甲帯、胸椎、さらには下肢機能、全てを総動員して行われる投球はまさに一球入魂ですね

ご覧いただきありがとうございました

マイル
理学療法士・ブロガー
理学療法士歴10年超の30代
クリニック、病院勤務、スポーツチーム帯同を経て得た経験を発信中
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