の著者であるNagahara先生が、加速時の胸郭、骨盤の動きについても報告されているので紹介します
ニッチな情報はPTマイルの大好物
スプリントの加速時には3つのセクションがあり、異なる戦略で加速していくという報告から4年
加速時の胸郭、骨盤の動きに着目して分析をされた論文です
マイルも、加速時の骨盤、背骨の動きは面白いと感じていることがありました
この時の動きを客観的なデーターで示してくれている論文です
こういうものは調べていくと沼にハマりますね
この記事のポイント

- 12名の被検者は60mの最大スプリントを行った
- 47個のマーカーと60台のカメラを使用し胸郭と骨盤の動きを分析した
- 加速時の速度増加に影響する要因は、それぞれの加速セクションで異なることが分かった
文献情報
加速時の胸郭と骨盤の運動学
Nagahara R, Matsubayashi T, Matsuo A, et al.” Kinematics of the thorax and pelvis during accelerated sprinting” J Sports Med Phys Fitness 2018 Sep;58(9):1253-1263.
doi: 10.23736/S0022-4707.17.07137-7.
抄録和訳
背景(Background)
本研究の目的は、最大スプリントの加速局面における胸郭および骨盤の動きの変化を明らかにし、どの運動学的変量がより優れた加速パフォーマンスと関連するのかを明らかにすることであった
方法(Methods)
12名の男子短距離選手が60mスプリントを行い、その時の胸郭および骨盤角度、さらに体幹角度の三次元的な変化を、50mの距離にわたってステップごとに分析した
結果(Results)
胸郭および骨盤の動きのパターンは加速局面全体を通して維持されていたが、胸郭と骨盤の相対的な動きは3つの平面で異なっていた
胸郭と骨盤のピーク傾斜角の増加はそれぞれ−10.3°および3.2°で止まり、体幹伸展可動域は13〜15歩目以降で減少した
また、胸郭と骨盤の傾斜角はそれぞれ15.3°および8.8°から減少し、逆に回旋角度は23.5°まで増加し、骨盤は約16°でプラトーとなった
さらに、加速局面の初期(4歩目まで)では、胸郭の傾きが小さく骨盤の前傾が深いこと、骨盤および体幹の回旋が小さいこと、胸郭の傾斜が大きいことが走速度の向上と関連していた
中期(14歩目まで)では骨盤の前傾が深いこと、終期では体幹のねじれ(torsion)および胸郭の傾斜が小さいことが、走速度の向上と関連していた
結論(Conclusions)
スプリント時の加速は単に体幹の動きを増やすことによって行われるのではなく、走速度の増加に伴い加速パフォーマンスに重要な要素は変わっていくことを示唆している
マイルの推し文(POWER SENTENCE)
In the coronal plane, the ipsilateral thorax listed upward during the support phase and following the flight phase. Meanwhile, the ipsilateral pelvis listed downward during the support phase and upward during the following flight phase.
前額面では、同側の胸郭は支持期から遊脚初期に上方に傾く. その時に、同側の骨盤は支持期に下方に傾き遊脚初期に上方へ傾く
感想にまいる
マイルの偏った見方も入ってしまいますが、走行を観察するときに矢状面から観察することが多く、前額面状での運動はあまり分析されていないことが多い気がしています
ですが、この論文では前額面での胸郭、骨盤の動きも分析されており前額面のデータも客観的に示してくれています
加速パフォーマンスをあげるためには体幹だけでなく上下肢と骨盤、胸郭の関係を考慮していく必要があると結ばれている論文で、
加速パフォーマンスをあげるためには上下肢、体幹の動きを連動させることの重要性を説いてくれています
今回は、論文内での各加速局面での骨盤、胸郭の動きを紹介します
文献内の図を引用したいところですが、著作権の関係で載せることはできないので文章とオリジナルの図でお伝えします
被験者の加速走行時のステップ毎(1~25歩)の胸郭、骨盤の動きを三次元の方向から分析しています
矢状面
- 胸郭は徐々に直立位となり、第15歩以降は一定に保たれた
- 骨盤の前傾角は第15歩までわずかに増加し、その後は維持された
- float期およびstance期において
- 胸郭はそれぞれ前傾および後傾し
- 骨盤はそれぞれ後傾および前傾した
- 各ステップにおいて胸郭と骨盤の相対的な動きが逆位相(out-of-phase)を示し、この矢状面における胸郭と骨盤の運動は、加速局面全体を通してほぼ同じだった

水平面
- 胸郭と骨盤は支持期に同時に内旋方向へ運動
- 胸郭と骨盤の相対的な動きは同位相で、この運動は加速局面全体を通じてほぼ同じだった
- 胸郭が最大内旋に到達するタイミングは、加速局面後半では遅延した

前額面
- 支持期およびそれに続く浮遊期において、同側の胸郭は上方に傾いた
- 一方、同側の骨盤は支持期に下方に傾き、その後の浮遊期に上方に傾いた
- これは、各ストライドで骨盤の傾きに4分の1位相の遅れが生じ、加速局面全体を通して維持される

これらのデータを用いてステップワイズ重回帰分析を行うと
加速スプリント中の速度増加に影響する要因はそれぞれの加速セクションで要素が異なっていました
- 加速初期:
- 胸郭の最大前傾角
- 骨盤の最大前傾角
- 骨盤の最大回旋角
- 体幹の最大内旋角
- 胸郭の最大側方傾斜角
- 加速中期:
- 骨盤の最大前傾角
- 加速後期:
- 体幹の最大内旋角
- 胸郭の最大側方傾斜角
これらの結果は、加速パフォーマンスに重要な骨盤、胸郭の運動は加速のセクション毎に異なることを示しています
今回、マイルが着目している前額面上では、脊柱は蛇行することで加速をしています
後方からのスプリント加速の動画をご覧下さい(推奨:再生速度0.25倍)
加速初期(最初の4〜5歩)は、足幅をワイドについて背骨がくねくね動きながら加速していく様子が伺えます
この論文では、胸郭、骨盤の動きに関して3次元的な動きを各断面で分析し、加速パフォーマンスの向上のためには単に体幹の動きを鍛えるのではなく上下肢と協調的に体幹を動かすことが重要だと提言されています
チーム現場では、ウォーミングアップやフィジカルトレーニングとしてアニマルトレーニングを取り入れる風潮が出てきていますが、
脊椎の動き、肩甲胸郭の動き、連動した上下肢の動きを獲得するためには、やはりアニマルトレーニングのような協調的な運動やヒップロックなどを練習で取り入れる必要があると考えさせられますね
リハビリの評価でも骨盤、腰椎の側屈の可動性なども評価をしていきたいポイントです
競技力向上のためには、競技練習をすることが一番ですが、練習だけではどうしても動きが偏ってしまいます
コンディショニング目的も含めて取り入れていくことができるといいですよね
また、リハビリの場面では病院やクリニックで勤務していると、どうしても患部に着目してしまい、全身的な動きは復帰後のチーム練習でとなってしまうことが多いです
リハビリにおいても、各関節の動きを獲得した後に、復帰後のパフォーマンスアップを考えて全身の協調運動も視野に入れたリハビリメニューを作成していくことが大切ですね
適切な力が適切な可動性の中で適切なタイミングで働くことで、協調された運動が達成できると考えられます
これはいわゆる運動センスという言葉で捉えられますが
リハビリでもそのような動きを少しでも引き出すことができたら、セラピストとして次のレベルにいくことができるのではないのかなと思ったりもしています
ご覧いただきありがとうございました
関連記事
















コメント