膝蓋大腿関節に歩行時は体重の何倍の負荷がかかりますか?
そんな疑問に答えてくれる論文です
膝蓋大腿関節は、意外と数が多く軟骨の損傷程度によっては経過が長引く症例も多いです
術後でも、合併症として症状を呈する方がいて術後経過が難渋する一つの原因にもなったりします
今回は、どんな運動でどれくらいの負荷が膝蓋大腿関節にかかるかという研究をした論文を紹介します
この記事のポイント

- 健常者20名に31個の反射マーカーを取り付け規定に沿って被検者は35種類の運動を実施しました
- 各運動をコンピューターモデルで計算し膝蓋大腿関節の負荷を計算しました
- 計算結果を基に各運動をレベル1~3に分類しました
文献情報
35種のリハビリテーション運動と日常生活動作時の膝蓋大腿関節の負荷
Song K, Scattone Silva R, Hullfish TJ,et al: Patellofemoral Joint Loading Progression Across 35 Weightbearing Rehabilitation Exercises and Activities of Daily Living. Am J Sports Med.2023 Jul;51(8):2110-2119.
doi: 10.1177/03635465231175160.
抄録和訳
背景
段階的にリハビリで負荷を与えていく運動は、膝蓋大腿関節痛に対するメインのリハビリテーションであるが、荷重を伴うリハビリテーション運動時の膝蓋大腿関節への負荷に関する定量的なエビデンスは乏しい
目的
35種類のリハビリで行われる荷重運動と日常生活動作における膝蓋大腿関節の負荷レベルを定量化し、比較、順位付け、分類するために負荷の指標を明らかにすること
方法
20名の健常者を対象に、各運動時のモーションキャプチャーおよび床反力データに基づいた予測モデルにより膝関節屈曲角度と膝伸展モーメントを算出し膝蓋大腿関節の負荷を定量化した
各運動の、負荷のピーク値と累積インパルスを加重合計して負荷指標を算出した
その後、35種類のリハビリテーション運動と日常生活動作を負荷インデックスに基づき、低・中・高の負荷レベルに分類・順位付けした
結果
膝蓋大腿関節の負荷レベルは運動や動作によって大きく異なり、体重の0.6倍の負荷がかかる歩行時から、8.2倍の片脚ディクラインスクワットまであった
多くのリハビリテーション運動は中程度の負荷レベルだった
歩行に類似した低負荷レベルの運動や、負荷が高く持続する高負荷レベルを提供する運動は少なかった
膝関節屈曲角度の大きい運動は、高強度の運動と比較して、より高い膝蓋大腿関節負荷を生じさせる傾向だった
結論
同一の被験者群を対象に、多数の荷重運動時の膝蓋大腿関節負荷を定量化した初めての研究である
マイルの推し文(POWER SENTENCE)
Our findings also match previous biomechanical studies that reported higher patellofemoral joint forces in deeper knee flexion angles. In contrast, many fast, high-intensity exercises like running and single-leg fast forward hops provide only a low or moderate level of overall loading, despite often being clinically perceived as high-intensity rehabilitation exercises. These findings support the potential benefits of reordering high-intensity and high–knee flexion exercises during rehabilitation in order to smoothly progress loading on the patellofemoral joint under recovery.
我々の発見はより深い膝屈曲角度になるほどPF関節の負荷が増加するというバイオメカニカルな研究と一致した
対照的に、臨床的には高強度と考えられているリハビリのエクササイズにも関わらず、ランニングや高速での片足前方ホップなどの速くて高強度の運動は、低〜中強度のレベルだった
これらの発見は、リハビリ中のPF関節の負荷をスムーズに上げていくためにリハ中の高強度、膝の深屈曲を伴う運動の順序を再構成することが有益であることを示唆する
感想にまいる
35種類もの運動時に膝蓋大腿関節にかかる負荷を客観的なデータとして示してくれた研究で運動療法を行うセラピストにとって有用な論文です
実際に、各運動時にピークでかかる負荷が体重の何倍なのかを示してくれています

日常生活レベルに着目すると膝蓋大腿関節に生じる最大の負荷は、
歩行は0.6倍、階段の昇段(20cm)は3.6倍、降段(20cm)は5.8倍、走行は5.4倍の負荷がかかっていますね
論文中でも述べられていますが、膝の角度が大きいものは膝蓋大腿関節の負荷が増え、膝蓋大腿関節が浅い、高速で行う運動は負荷が低くなる傾向があると示されております
確かに、速く動作をするものは負荷が低い上の方に位置していますし、膝を深く曲げる必要がある運動は下の方に位置しています
この傾向を知っておくことは、膝蓋大腿関節のリハビリプロトコルを検討する上で一つ大事なヒントになりそうですね
ちなみに、各運動の正式な方法に関しては、ページ内のSupplemental MaterialからPDFファイルを取得することができます
トレーニング時にはもちろん、病態を説明する際やリハビリの方針を説明する際にも役立つデータです
ぜひ、実際の臨床現場で活用してみて下さい
また、論文中では他の同様な研究結果と比べた記載もありました
(Escamilla et al estimated patellofemoral joint force during single-leg squat up to 4.3×BW, which is notably lower than our estimate (6.9×BW).)
These disagreements may be partly explained by different movement strategies. For example, Escamilla et al instructed their participants to squat slowly, whereas our participants squatted at a self-selected pace.
(Escamillaらは、片足スクワットでの膝蓋大腿関節の負荷は体重の4.3倍で我々の計測した6.9倍よりも明らかに低かった)
これらの不一致は、異なる運動戦略を用いたために生じた可能性がある
例えば、Escamillaらはスクワットをゆっくり行うように指示しているが、我々はスクワットの速度は各自に任せていた
運動によって、膝蓋大腿関節に生じる負荷は異なることはもちろんですが、
運動速度によっても膝蓋大腿関節の負荷をコントロールすることができることを示唆してくれる一文ですね
実際の臨床現場では、データが全てというわけではありません
PF損傷をしていても、損傷する軟骨の部位はそれぞれ違います
また、損傷程度も様々です
大事なことは、目の前の方からいただくフィードバックということになりますが、
大腿膝蓋関節に対して生じる負荷の運動レベルや、実際の体重比を知っておくことで段階的なリハビリを提供することができ
運動方法や運動速度を変えてその方にあった運動が処方できるとお互いに納得しながらゴールへ辿り着くことができるのではないでしょうか
この論文もぜひご一読ください
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