以前の記事でハムストリングスの代表的なトレーニングであるレッグカールとヒップリフトに関して複数の文献から筋活動をとらえました
今回は、10種類のハムストリングスのトレーニング時の筋活動を分析した論文を紹介します
各運動の筋活動を研究しているので面白い内容です
ぜひご覧ください
この記事のポイント


- 第1部の研究では、10種類の運動の筋電図活動を分析しました
- 第2部では、第1部の研究より10種類の中で最も大腿二頭筋の比率が高かったヒップエクステンションと、最も大腿二頭筋の比率が低かったノルディックハムの運動時のハムストリングスの活動を機能的MRIで分析しました
- 運動によりハムストリングスの筋活動は異なることが分かりました
文献情報
運動選択がハムストリングスの筋活動に与える影響
Bourne MN, Williams MD, Opar DA, et al.”Impact of exercise selection on hamstring muscle activation”Br J Sports Med.2017 Jul;51(13):1021-1028.
doi: 10.1136/bjsports-2015-095739.

抄録和訳
目的
大腿二頭筋長頭(BF Long Head)筋を選択的に活動させる筋力トレーニング運動を決定すること
方法
二部構成の観察研究を24名を対象に行った
第1部:10種類の一般的な筋力トレーニング運動において、求心性および遠心性フェーズでの外側ハムストリング(BF)と内側ハムストリング(MH)の筋電図の振幅および比率を調べた
第2部:第1部において最も選択的にBFを活動させた運動と最も選択的でなかった2種類の運動中におけるハムストリングの活動パターンを機能的MRI(fMRI)を用いて分析した
Results(結果)
遠心性局面では、最大のBF/MH の筋電図比は45°ヒップエクステンション運動で、最小はノルディックハムおよびニーベントヒップリフトだった
求心性局面では、最大のBF/MH の筋電図比はランジおよびヒップエクステンションで、最小はレッグカールおよびニーベントヒップリフトだった
fMRIでは、ヒップエクステンションにおいて、大腿二頭筋長頭と半腱様筋の活動比がノルディックよりも大きいことが明らかだった
ヒップエクステンション後のT2増加は、大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋において、大腿二頭筋短頭よりも大きかった(p<0.001)
ノルディックハムでは、T2増加は他のハムストリング筋よりも半腱様筋で大きかった(p≤0.002)
Summary(要約)
我々は、運動選択の違いでハムストリングの活動パターンが異なるということを強調する
ヒップエクステンション運動は二関節筋のハムストリングスを選択的に活動させ、ノルディック運動は半腱様筋が優位に活動する
これらの知見は、ハムストリング損傷予防に役立ち、セラピストが特定のハムストリングをターゲットにした運動処方ができる可能性がある
マイルの推し文(POWER SENTENCE)
Characterising the activation patterns of the hamstrings during different tasks is an important first step in identifying exercises worthy of further investigation; however, electrical or metabolic activity of muscles should not be the only factors considered in exercise selection. Indeed, despite the BFLongHead being more active in hip extension, there is currently no evidence to suggest that training with this exercise actually leads to a reduction in the risk of HSI. Further work is required to understand how the hamstrings adapt to this and other exercises, and adaptation is influenced by a range of mechanical factors, such as contraction mode and range of motion, which were not a part of the current investigation.
異なる運動で生じるハムストリングスの筋活動パターンを特徴付けることは、運動を識別する上で重要で、さらなる研究をしていく価値がある。しかし、筋電図や代謝の活動だけの要素で運動の選択を判断するべきでない。実際、大腿二頭筋長頭はヒップエクステンションでより活動するにも関わらず、現時点ではこの運動がハムストリング損傷のリスクを下げるというエビデンスはない。ハムストリングスがこの運動や他の運動でどのように活動するのかを理解するためには、本研究では含まれなかった収縮様式や関節可動域のようなメカニカルな要因がどのような影響を及ぼすか、さらなる研究をしていく必要がある。
感想にまいる
10種ものハムストリングスのトレーニングの筋電図活動と2つのトレーニングをピックアップしてfMRIを用いた研究でした
人間の運動を詳細に把握するのって難しいんだなと文献を読んでて改めて気付かされました
運動をすることで生じる全身の筋活動や代謝的な活動、その時の各関節の運動や全身の各筋の様々な収縮様式が起こって、さらに無意識な部分では反射運動が起こったり、
筋も様々な形態があって、筋線維が均一な配列でなかったり筋内腱の走行に特徴があったり、靭帯や関節での静的な機構も関わってきたり、
運動自体も同じフォームでも重心の位置や周りの環境が変わればまた動作が変わったり、
その運動に精通している人とそうでない人では同じフォームでも発揮できるパフォーマンスが違ったり、
そういう条件の中で、詳細に運動自体を分析して完全に理解することは不可能なのでは…?
と思ったりもしてしまいます
まだまだ、これから検討されていくべきことは多そうです
セラピストとしては運動を処方するために、運動中の筋活動やその筋の持つ解剖学的な役割を病態などと重ね合わせて運動処方ができるとより良さそうですよね
今回研究対象となった10のエクササイズですが
それぞれリハビリやトレーニングの場面でも行われることが多い運動なので、ぜひ筋活動を把握しておきたいです↓

fMRIというのは、運動時の筋の代謝活動を表しており運動前後でMRI検査を行い、運動後の各筋の水分量の時間推移を計測することでターゲットとしている筋の筋活動を推測するものですが
今回の研究では、大腿二頭筋長頭の変化を半腱様筋の変化で除したものをヒップエクステンションとノルディックハムで比較しています↓

この結果より、大腿二頭筋の長頭をターゲットにする目的ではヒップエクステンションの方がより良い運動ということが考えられます
ただ、筋活動を見るとノルディックハムも大きな外側ハムストリングスの出力があるので
目的に応じて運動を選択できると良いですね
論文中では、股関節が主導で動くトレーニングと、膝関節が主導で動くトレーニングで筋活動の特徴が異なるとの記載もありました
これは大腿二頭筋長頭と半腱様筋のモーメントアームの違いから生じると仮説を立てていました
膝を屈曲で動かすトレーニングでのハムストリングスの活動は半腱様筋、股関節伸展で動かすトレーニングでのハムストリングスの活動は大腿二頭筋長頭が構造的に働きやすいのではないかと述べられています
ハムストリングスの運動を提案するときは、運動戦略も意識して目的にあった運動を選択する必要があります
ベースとなる知識を基に様々な工夫をしながら、その人に合った運動を提案できるといいですね
ご覧いただきありがとうございました
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