【加速にも相があった!?】スプリント加速時の運動学的変化

「On your marks(位置について)」

「Set(ヨーイ)」

(ドン)」

-陸上選手がスタートしてから加速していき最大疾走速度に達する-

この動きは誰しもが1度は見た光景だと思います

よく見るけれども、1歩1歩の動きと身体の変化を着目してみることは、陸上と向き合う方以外は、なかなか無いかと思われます

素人の私には何が起こっているのかよく分かりません

加速時に人の身体ではどのような変化が起こっているのか、どのようにして最大疾走速度まで加速をしているのかを示唆してくれる論文をご紹介します

目次

この記事のポイント

  • 12名の被検者は60mの最大スプリントを行った
  • 47個のマーカーと60台のカメラを使用し加速時の身体の動きを分析した
  • 加速は3つのセクションに分類されそれぞれのセクションで異なる加速戦略を持つことがわかった

文献情報

速時のトランジションの運動学

Nagahara R, Matsubayashi T, Matsuo A, et al.” Kinematics of transition during human accelerated sprinting” Biol Open. 2014 Jul 4;3(8):689-99.

doi: 10.1242/bio.20148284.

抄録和訳

背景

この研究では、50 m にわたる人間の加速スプリント動作の運動学を調査し、加速相全体においてブレークポイントおよび加速戦略の変化が存在するかどうかを検討した

方法

12名の男性スプリンターが60mスプリントを実施し、その間のステップごとの運動学的データが60台の赤外線カメラを用いて取得された

加速相における遷移点を検出するために、支持期における重心の高さが指標として採用された

結果

最大スプリントにおける加速相全体において2つのブレークポイントが見いだされ、これにより加速相は初期・中期・後期の3つの区間に分けられた

スプリンターが検出された1stブレークポイントを越えた際には、足部が重心前方で地面に接地すること、支持期中に膝関節が屈曲し始めること、ステップ頻度の増加が終了することといった、運動学的変化が確認された

また、2ndブレークポイントでは、身体姿勢の変化が終了し、股関節の動きがわずかに減少し始めることが確認された

各加速区間では、重心の前方速度の増加に対する下肢各セグメントの貢献の仕方が異なっていた

すなわち、初期区間では大腿と下腿、中期区間では大腿・下腿・足部、後期区間では下腿と足部が主に貢献していた

これにより、加速相全体における異なる加速戦略の存在が明らかとなった

結論

人間の最大加速スプリントにおいては2つの遷移点が存在すると推定され、これにより加速相全体は3つの区間に分けられ、それぞれの区間では、ランニングスピードに対する各セグメントの貢献によって特徴づけられる異なる加速戦略が用いられていることが示された

マイルの推し文(POWER SENTENCE)

Three acceleration sections (the initial section, from the first step to the first breakpoint; the middle section, from the first breakpoint to the second breakpoint; the final section, from the second breakpoint to the step when the running speed became maximal), having different acceleration strategies, are determined according to our two detected breakpoints.

異なる加速様式を持った、3つの加速セクションが2つのブレークポイントによって区分けされている

(加速初期:最初の1歩から1stブレークポイントまで、加速中期:1stブレークポイントから2ndブレークポイント、加速後期:2ndブレークポイントから最大速度まで)

感想にまいる

スプリントにおいては、加速時に体幹を前傾させ重心をできるだけ前方にすることで地面を押して推進力を得て

徐々に体幹が立っていき最高速度に達して走っていくというイメージをなんとなく持っていました

この研究では、実は加速局面には3つのセクションがあってそれぞれ加速するための戦略が違うということを示してくれています

私自身、陸上の専門家ではないので加速局面まで分析したことはありませんでしたが、加速時の特徴を把握しておくことは様々な競技に応用が効くと考えられます

また、陸上選手とのコミュニケーションを深めることができるきっかけになるかもしれません

加速は2つのブレークポイントによって3つの相に分けられます

図は、各ステップ数でのイニシャルコンタクトとトーオフの時の身体図式を棒人間で表しています

走行データと重心の高さを統計分析することにより、1stブレークポイント平均4.4歩のところ、2ndブレークポイント平均14.1歩のところと算出されました

この算出方法がややこしく理解が難しいところですが、1stブレークポイントは換気閾値(VT:ventilatory threshold)を出す方法を応用しているようです

また、2ndブレークポイントは無酸素性作業閾値(AT:anaerobic threshold)を算出する際に用いられた方法を応用しています

肉眼ではこのブレークポイントを見極めることは難しいかもしれません

ですが、おおよそスタートしてから4~5歩14~15歩あたりに着目しておくと良さそうです

このブレークポイントを境に、加速相は初期(0~4,5歩)中期(4,5歩~14,15歩)後期(14,15歩〜)と分けて考えていきます

初期

スプリンターは足を身体の後方で地面に接地させ、股関節・膝関節を伸展させながら地面を押し出すようにすることでストライドおよびピッチ数を増加させて走速度を高めていました

支持期には膝の屈曲はみられずイニシャルコンタクトからトーオフまで膝は屈曲から伸展するように働きます

さらに、支持脚のステップ数の変化に伴って重心を急速に上昇させており、体幹姿勢の変化とともに脚が重心上昇に比較的大きく寄与していました

中期

スプリンターは足を身体の前方で地面に接地して、支持期には膝関節の屈曲・伸展運動が見られ、ストライド長を増加させることで加速していました

また、頭部および体幹姿勢の変化が主に重心の上昇に関与していました

スプリンターは下腿の角速度を増加させて、大腿、下腿、および足の垂直速度の増加は初期とほぼ同等程度でした

初期のように前傾位で進むとバランスを崩してしまうため、足部を前方につくようになることで膝の屈伸運動が出現してくるのではないかと考察されていました

後期

走速度はストライド長を増やすことで増加していきます

重心の高さや頭部・体幹角度の変化は最終区間では安定していました

また、股関節の可動域および角速度はわずかに減少しており、下腿の角速度および足部の前進速度が増加していました

後期では、身体の変化が安定してきて最大疾走時に近いようなフォームで加速していくようです

競技復帰前にリハビリとして加速の練習をする、走速度を一気に上げるメニューを行うときに、

各加速時期での関節の使い方が特徴づけられていることはより加速にフォーカスしたリハビリメニューを立案するための一助となりそうです

最初の5歩にアプローチするのか、5~15歩に、15歩以降の加速局面に、あるいは最大疾走時の速度維持のフェーズを意識して運動を行うことができるのか

陸上以外のスポーツ競技でも最初の5歩が大事なのであれば、10歩が大事なのであれば加速相の初期、中期の動きを意識して重心の位置や、膝の使い方などを意識するといいかもしれないですね

パフォーマンスアップをするために、加速も大事な要素となってきます

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次