ACL再建術

ACL再建術を行うといっても、術式が様々あり主治医の先生によっても意見が分かれるところです

ACL再建術の術式はどんなものがあるのかを見ていきましょう

PTが簡単に発信する内容です

簡単に術式を紹介していきます

目次

この記事のポイント

  • ACL再建術の術式は様々ありますが、簡単に各術式を紹介します

ACL再建術の術式

ST(G)

半腱様筋腱(Semitendinosus tendon)をグラフトとして利用

半腱様筋だけでグラフトが作成できない場合は薄筋(Gracilis)も利用します

主治医の判断で、ACLのAMB(Anterior Medial Bundle)PLB(Posterior Lateral Bundle)を考慮した解剖学的肢位で2roots再建することや、

年齢、骨密度、スポーツの復帰レベルを考慮して1rootでの再建術を選択することもあります

骨孔を作成する際の侵襲の方法としてInside outやoutside inがあります

ハムストリングスから採取するので術後の膝屈曲筋力の低下が生じる可能性があります

個人的には、グラフト採取に利用した半腱様筋の再生腱の論文をみてほほぅ!となりましたので紹介しますね

倉持先生が報告されたレビュー論文です

[膝前十字靭帯再建術後の採取後半腱様筋腱・薄筋腱の再生に関するレビュー]

グラフと採取後の半腱様筋、薄筋腱の再生に関してのレビュー論文で、半腱様筋、薄筋ともに再生腱としてほぼ元通りの形態で再生することが明らかになった

再生過程としては、術直後から1ヶ月程度で再生腱の停止位置やルートが決まりその後3ヶ月程度かけて肥大し徐々に健側の形態に近似していく と報告されています

30cm程度の長さを採取しますが、この採取部から徐々に再生していくという知見は面白いですよね

論文ではとかげのしっぽのように再生すると表現されていました!

リハビリをする上でも再生腱を考慮したリハビリが必要となってきそうですね

BTB

Bone-Tendon-Bone

膝蓋腱を利用し、骨付きのグラフトを作成してACLを再建します

骨-骨の成熟でグラフトの癒合が早いと言われています

ハムストリングスの侵襲がないことはメリットですが、術後のAKPが生じやすいといわれています

QT(B)

四頭筋腱(Quadriceps Tendon)を利用します

また、四頭筋腱の膝蓋骨に付着する骨も採取しグラフトとして利用することもあります(Quadriceps Tendon Bone)

ST(G)、BTBと比べると症例数が少なくこれからの知見が期待されていますが、術後成績は良好な報告が多い印象です

Clinger先生がQTを利用したACL再建について報告されています

BTBと比較するとAKPは少ないようです

Clinger先生の報告された論文では

[Quadriceps tendon autograft for anterior cruciate ligament reconstruction: state of the art] にて

QT腱を利用したACL再建術について詳細に報告をされていますのでご一読ください

人工靱帯

ACL再建術に人工靭帯を使用することも以前はあったようですが、現在ではあまり使われることは少ないようです

しかし、欧州や中国ではLARS(Ligament Advanced Reinforcement System)というポリエステル製の人工靭帯を再建靭帯の補強材として使用することがあるようです

Moretti先生の論文

[Anterior Cruciate Ligament Reconstruction with LARS Synthetic Ligament: Outcomes and Failures] にて

35歳以上のレクリエーションレベルのアスリート48例とセミプロのアスリート5例を対象にLARS人工靭帯を用いたACL再建術の有効性を調査

術後のLysholm、IKDCスコアは良好であったが40%の患者が術前の運動強度に戻ることができなかったと報告しています

Allograft

同種腱移植術として、ドナーの靭帯を利用します

自分の腱を使わないので侵襲が少なく済みますが症例数はかなり限られます

Noronha先生がケーススタディを報告されており

[Return to play after three ipsilateral anterior cruciate ligament reconstructions in an elite soccer player: A case report] にて

同一側のACLを3回断裂した32歳のプロサッカー選手が、アキレス腱から作成されたAllograftを用いたACL再建術を受け競技復帰を果たした症例を報告されています

Xenograft

動物の組織を利用します

海外では症例報告がありますが日本では聞いたことがないです

この術式を受けると自分で意思決定するには、個人的にかなりの勇気がいりそうです。。。

Stone先生が投稿された

[Xenograft bone-patellar tendon-bone ACL reconstruction: a case series at 20-year follow-up as proof of principle]にて

豚由来の骨-膝蓋腱-骨を用いたACL再建術を10例に行い5例が20年後も安定した膝機能を維持していた

安定しなかった5例の内訳は、外傷による再断裂が3例、関節線維症が1例、手術ミスが1例だったと報告されています

おまけ:関節外補強術(LEAP)について

前十字再建術に加えて、関節外補強術を行うことでACL再建術後の術後成績が良いとの報告もあります

関節外補強術(LEAP:Lateral extra-articular procedure)としては

ALL(Anterolateral ligament)やALS(Anterolateral structure)と言われる膝前外側構成体を薄筋腱で補強する手術です

薄筋腱が使用できない場合は、腸脛靭帯を利用するlateral extra-articular tenodesis(LET)という方法を行うこともあります

Ueki先生が投稿されている

[Contribution of Additional Anterolateral Structure Augmentation to Controlling Pivot Shift in Anterior Cruciate Ligament Reconstruction] にて

ALS補強術後に、膝の前外側不安定性が減少したと報告されています

補強術を行うとACL再建術と常に併用してもいいのでは?と思いますが、

手術を追加することによるリスクは様々あり、Servant先生による編集コメントでは適応を見極めて実施するべきだと提言されています

まとめ

ACL再建術といっても、このように様々な術式があります

術後のプロトコルが大きく変わることや再発率の違い、復帰率の違いなど手術の母数が一定となってくると自家腱移植に関しては大した差はないようにも感じますが、今後の発展に期待です

ACL再建術がもっと斬新な方法で行われ、復帰時期が大幅に短縮する日は来るのでしょうか…!?

また、PRPの有効性も示されてきており、これら手術とのコラボレーションも期待できそうですね

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