ACL術後リハビリの流れについて① 受傷から手術・術後病院リハビリ

ACL再建術が無事終了すると術後のリハビリが始まります

一般的には復帰まで約10ヶ月〜1年の長期戦なのでリハビリ中は紆余曲折ありますが、

復帰するためには乗り越えていかなければなりません

今回は、術後のリハビリについてマイルが経験したACL再建術後の症例ヒザ(仮名)をもとに

受傷後の対応から復帰までを一連の流れでお送りします

長編になったので2章に分けてお送りします

お時間ある時に、気長にご覧ください

目次

この記事のポイント

病院とチームでのリハビリの違い

医師の見解により手術の術式が変わることで、術後のプロトコルも多少変わる部分はありますが

大まかな流れは変わらないかと思われます

患部の治癒としての鍵は

  • 術後早期の炎症管理
  • 創部の治癒(感染しない)
  • 骨孔の成熟
  • グラフト採取部の成熟
  • 再建グラフトの成熟

などが考えられます

病院とチームでプロトコルの進め方は大きく変わらず、チームでも主治医のプロトコルを踏まえてリハビリをしていきます

しかし、チームでのリハビリにおいては

患者(選手)と関わる時間が圧倒的に増えること、

また復帰に向けたグラウンドレベルでのアスレティックリハビリテーションの割合

が病院のリハビリとは格段に変わってきます

実際に、チームでACL術後はどのようにリハビリをしていたのか

今回は、ヒザ子と一緒にリハビリの流れをご紹介します

ご紹介するヒザ子は経過が最も良かった症例です

半月板や軟骨、側副靭帯損傷の合併もなく単独のACL損傷症例でした

プロフィール

ヒザ子

21歳 女性 サッカー選手

(※ヒザ子の個人情報が特定されないように留意しております。)

ACL損傷〜復帰まで

ヒザ子 ACLを損傷する

受傷場面

サッカー:ゲーム形式のトレーニング中

受傷起点

センターバックからパスを受けた、相手左サイドバックの選手がトラップした瞬間の

ボールを奪おうとプレスをかけ

左軸足で右脚を伸ばそうとした際に左膝がゴリ音とともに抜けてしまい受傷

ヒザ子うずくまっている

ヒザ子のもとへ駆けつける

ヒザ子

痛い。痛い。

マイル

どうなったか教えてくれる?

ヒザコ

膝がゴリッとなって抜けた感じ

マイル

まさか…

ヒザコ

痛くて立てない

マイル

仰向けで楽にしておいて

マイル

ROM 伸展出ない
防御性の収縮強いな
腫れはまだそんなにないな。

マイル

力を抜いていてね。 

マイル

Lachman チェック End pointなし。。

ピッチサイドへ移動し、一旦アイシング

マイル

すぐ病院に連絡するね。

松葉杖をついてクラブハウスへ

クラブハウスで膝を固定

チームドクターへ連絡

徐々に膝が腫れてくる

病院へ移動

ヒザ子 病院受診する

MRI検査、徒手検査を行い

ACL断裂の診断

手術決定

受傷当日に病院受診し、MRI検査も行うことは一般的ではありません

マイルは病院勤務でトレーナー活動をしており、医師もチームドクターとして病院に在中、

放射線技師との連携もスムーズな環境でしたので、このようなスピード感で

受傷当日に病院受診、MRI検査、診察ができました

一般的には病院を新規あるいはかかりつけのところへ受診し、

後日検査、後日診断となります

ヒザ子 術前リハビリをする

ACL術前リハビリについて

をご参照ください

手術待機期間は3wでした

ヒザ子 手術をする

術式

ACL再建術 ST2roots

半月板合併なし

手術は無事終了しました

重大な軟骨損傷や半月板の損傷もなく、ACL単独損傷に対して再建術が行われました

後療法

術後可動域荷重
~1w0-90完全免荷(NWB)
1w~0-130可及的にup

後療法は上記の指示のもと初期のリハビリをすすめていく事となりました

ヒザ子 術後リハビリをする

ヒザ子の経過

  • 1w 部分荷重開始
  • 1.5w 硬性装具へ変更、退院
  • 2.5w 屋内松葉オフ
  • 3.5w 屋外片松葉開始
  • 5w 松葉完全オフ
  • 8w SQ開始
  • 12wジョグ開始
  • 16w 加速走開始
  • 20w 筋力測定
  • 27w 部分合流
  • 30w練習フル合流
  • 32w 試合出場

このような経過を辿り復帰をしました

術後0週

-術後翌日-

ヒザコ

痛いよ〜

マイル

手術お疲れ様。今日からリハビリをしていくよ

ヒザコ

痛い痛い

マイル

力を抜いて足をマイルに任せてね

ROMex(脱力練習)

ヒザコ

痛い痛い。。
あれ、力を抜いて動かしてもらったら楽になりました

マイル

ベッドサイドでは、足首の運動を積極的に行ってね

この時期は、術後の炎症が強く、腫れ、安静時の痛みが強い時期です

術後は軟性装具をつけて患肢を固定しています

術後の影響で炎症が起こり、

発痛物質の出現増、膝の水腫(血)の影響もあり

関節内圧が上がっていることで、

痛みが落ち着くまでは、筋の防御性収縮が強く入ってしまいます

痛くて力が入り、その刺激がまた侵襲のある軟部組織などを刺激して痛い

というサイクルで痛みが続くことが多いです

安静時痛が軽減するのは炎症が落ち着き始めてくる術後3日が一つの目安かと思われます

なので、術後翌日からのリハビリ介入では

物理療法を用いた炎症コントロールと、脱力をする可動域練習(ROMex)から始め、

筋の防御性収縮による疼痛をできるかぎり軽減させます

ROMexでは術前にフルで可動域が出ていたら

術翌日でいきなり拘縮することはないので痛みのない範囲から徐々に動かしていきます

患者さんにも力を抜いた方が痛くないと認識してもらえたら最高ですね

ROMexの際の膝伸展に関しては、

再建靭帯へのストレスを考慮すると、強引に伸展を出すことは再建ACLを緊張させることで、

骨孔を拡大させるリスクやグラフトを緩ませるリスクが考えられます

しかし、何日待てばいいのかという明確な基準もないので

伸展が出るかどうか、術後膝伸展制限が出そうかどうかをチェックする目的で伸展可動域を確認します

スムーズな伸展が出そうであればそれで良しとします

確認するだけで積極的にROMexは行いません

またGeneral Joint Laxity(GJL:関節弛緩性)が高い方であれば、

伸展は出さないで装具でできるだけ屈曲位としておきます

制限が出そうな硬い膝であれば、

伸展を早期に獲得できるようにROM頻度を高めて伸展が出るようにします

装具も少し屈曲角度を緩めたりします

もちろん主治医と相談して行います

また、患者さんによっては、浮腫が生じる方もいます

入院中、患肢を固定していて荷重もかけることができない状態では、循環不全が生じます

浮腫は、血管から染み出した滲出液ですが

これは循環を高めることで改善できますので早めから足趾、足関節を動かしてもらいます

また、リハビリ介入時は術後創部をチェックし

感染兆候がないか

装具をつけていることで神経症状は出ていないか

も把握しておきます

看護師さんもチェックしていますが念のためです

もし症状が出ていたら、主治医へ相談です

また、術前の膝の状態を把握していることも重要です

  • 受傷してから腫れがすぐに引いたのか
  • 可動域がスムーズに出たのか出なかったのか
  • 元々の関節は緩いのか硬めなのか
  • 筋力はすぐに戻ったのか
  • 通常歩行は受傷後どれくらいでできたのか

このような情報があると、

術後早期の可動域練習の割合や普段の過ごし方の指導が変わってきますね

術後3日あたりから安静時痛が引いてきたら

膝伸展筋のトレーニングをしていきます

術後1週経過(PO.1w)~退院へ

ヒザコ

痛みもだいぶ減ってきた!
足も自分の力で上がるね

マイル

いい経過だね
術前リハビリを頑張ってた甲斐もあったね
そしたら患側に体重をかけ始めよう!

1/4荷重開始

ヒザコ

思ったよりも痛みない
これなら体重かけても大丈夫だね

マイル

翌日に痛みや腫れが悪化しなければ少しずつ荷重量を増やすよ
退院したらクラブハウスのリハビリ開始だね

術後1週から荷重開始に向けて、怖いのは膝崩れです

荷重時の膝伸展機能が低下していると膝がカクッと曲がってしまいます

この時に脛骨の前方引き出し力が高まりACLを再損傷するリスクがありますので術後の膝崩れは防がなければなりません

そのために、まずは非荷重で膝が伸展できるようにトレーニングをしていきます

Active SLRとExtension lagをチェックするのが必要です

これをクリアできるまではフル荷重には移行せず、部分荷重も軟性装具を装着して行うこととなります

Active SLRができたら部分荷重を、

lagがなくなればフル荷重を行うイメージでリハビリを進めます

ですので、術後3日から膝伸展筋のトレーニングを開始し、

5日くらいで足が上がれば理想です

7日経っても足が上がらなければ部分荷重開始は少し延期します

しかし、荷重をかけることで循環の改善や下肢全体に筋収縮が入ることもあるので

膝折れリスク荷重をかけることのメリット

天秤をかけながら7日から部分荷重をします。

ヒザコは、2日で安静時痛消失3日からASLR可能6日目からlagも改善していました。

したがって、フル荷重の準備もできており7日目から部分荷重を開始できています

部分荷重は1/4から始めます

慣れることも必要なので徐々に荷重量をあげていき

  • 膝折れがないか、
  • 荷重後のリバウンド症状がないか

をチェックします

リバウンド症状は、腫れ、痛みを中心に把握していきます

腫れが引いたら、軟性装具から硬性装具へと切り替えます

ヒザコは10日で硬性装具へ切り替わりました

硬性装具は膝関節の可動性があるので膝伸展位で荷重をかけることができるようになります

病院にもよりますが、術後1w程度で

退院→外来リハビリ・チーム活動参加となります

ヒザコは10日で退院しました

まとめ

退院までのACL術後リハビリの流れをヒザ子の1例からお送りしました

退院後から復帰までのリハビリは

ACL術後リハビリの流れについて② 退院から競技復帰まで

をご覧ください!

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ACL断裂以外にも、様々なスポーツ外傷・障害に関してまとめてある書籍です!

スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション 改訂第3版

 

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