ACL再建術が決定すると、手術までの期間にリハビリテーションを行います。
今回は、術前のリハビリについてお送りします
この記事のポイント

- 術前の膝関節の状態が術後の膝関節に影響を及ぼす報告はいくつかあります
- 術後の経過をよくするために、術前にスムーズな可動域、歩行の獲得、左右差のない筋力を獲得しておくことが好ましいです
ACL再建術の術前リハビリの重要性
ACLの再建術が決定してからは、術前の膝の状態を良くする必要があります
私の経験上、術前の目標は以下のとおりです
- 炎症の消失(BOP-)
- スムーズな可動域の獲得(伸展0、屈曲130以上)
- 独歩の獲得
- 可能であれば筋力の左右差なし
ACLの術前リハビリテーションが術後に影響を与える因子として幾つかの文献を紹介します
Yasui先生の報告
[Preoperative Loss of Knee Extension Affects Knee Extension Deficit in Patients After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction] にて
術前のHHD2cm以上の膝関節伸展制限は術後に伸展制限が出現する可能性が約2.8倍高まると報告しています

Rushdi先生の報告
[Arthrofibrosis Following Anterior Cruciate Ligament Reconstruction]にて
ACL再建術を施行した166例のうち術後6週の時点で8例に関節線維症が確認された
術前に屈曲可動域制限(90~110°)と伸展制限(5~15°)が生じている症例が3例いたが、その3例は全例関節線維症を発症したと報告されています。
FlorianGiesche先生の報告
[Evidence for the effects of prehabilitation before ACL-reconstruction on return to sport-related and self-reported knee function: A systematic review] にて
術前のエクササイズが術後の膝自覚症状の改善や機能的パフォーマンスの改善と関わりがあると報告しています

田中先生の報告
[膝前十字靭帯再建術前の屈曲可動域制限が膝筋力に与える影響] にて
Heel to Hip distanceが0cmの群と0.5cmの群を比較したところ、術前の膝屈曲伸展筋力は良好群が有意に大きかったが術後は差がなかったと報告しています。
膝関節がいい状態で手術に向かうことは、術後の経過のためにも重要ですね
術前リハビリ
炎症コントロールからリハビリを開始し、状態に合わせてリハビリを進めていきます
術前の目標は、
- 炎症の消失(BOP-)
- スムーズな可動域の獲得(伸展0、屈曲130以上)
- 独歩の獲得
- 可能であれば筋力の左右差なし
としています
術前には、BIODEXやCYBEX等を利用した膝の屈曲、伸展の等速性筋力測定を行う施設もあります
そこで健患比の左右差がないほどリハビリして改善できていると良いですね
術前の状態は人によって様々です
- すぐに炎症が治り、可動域がスムーズに出て普通に歩くことができる人
- 炎症が遷延し水腫が引かない人
- 可動域制限が残る人
- 松葉杖なしで歩くことができない人
など様々なパターンがありますが
いずれも炎症が落ち着き、可動域がスムーズに出て歩行を獲得していくと手術に臨む準備ができたと判断します
私も術前の炎症が引かず、可動域制限、破行が原因で手術が延期になった例を経験しています
術前のリハビリがうまくできず、膝が良くない状態で手術をして、
炎症の遷延、サイクロプスの形成や術後の伸展制限で術後経過が難渋する例もみたことがあります
難渋すると早く手術をしても、
良くなるまでに時間が長くかかる場合や
後遺症が残る(膝伸展制限など)可能性が高くなりますので
患者さんの早く手術したい気持ちもあるかと思いますが、術前の状態を整えてから手術に臨むことをお勧めします
術前リハビリで膝の状態が安定したら、いよいよACL再建術に臨みます
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